備忘録としてこの記事をアップします。パルス信号を入力することで速度と距離を表示するデジタルメーターの巻き上げ方法を記載します。
巻き上げは出来るが巻き戻しは出来ない
走行距離の巻き戻しは違法です。この情報をアップする理由の一つにデジタルメーターは理論上巻き戻しが出来ない事があります。デジタルメーターはパルス信号が入力されることでメーターが進みます。マイナス電圧のパルス入力してもメーターは戻りません。そもそも巻き戻す仕組みが無いのです。また最近のメーターは最大値でカンスト(それ以上進まない)仕様の物があり、一周して巻き戻した状態を作り出すことも難しい様です。出来る事はメーターを進める(メーターの巻き上げ)ことだけです。
この情報が、メーター交換等によりオドメーターを巻き上げたい人への参考になれば幸いです。
※:因みにアナログメーターは分解すれば巻き戻しが出来るようです。勿論違法です。ここの記載しているのはデジタルメーターに対する巻き上げ方法です。
実施は自己責任
スピードメーターは精密備品です。無理な電圧が掛かればメーターは簡単に壊れます。実際、私もメーターを1つを壊しています。記載した方法を実施しても希望する結果が得られないこともあります。全ては自己責任
メーター交換
所持しているバイクは海外仕様でマイルメーターがついていました。運転速度については貼り付けたシールにより凡その速度が分かれば一人で走っていても問題ありませんでした。しかしオドメーターやトリップメーターは問題です。ちょっとした計算ミスや勘違いがガス欠を招きます。ガソリンタンクの小さなバイクでこれは致命的です。この問題の解決にはメーターの交換が必要です。
同じ仕様のキロ表示メーターが用意出来れば交換は簡単です。コネクターを外して付け直すだけでの作業です。汎用メーターを利用しても、いくつかのパラメータを設定するだけの軽度の作業で取り付けが出来るはずです。

機器を用意する
ここからが本題です。メーターを交換したことでオドメーターいわゆる走行距離計は初期化されています。ディーラー経由で購入すれば距離を調整してくれるサービスもある様ですが、このサービスの存在を知ったのは取り付けた後でした。そんな分けでオドメーターを巻き上げます。
Google先生を頼りに、関連する動画や記事を確認していきます
- 配線図を確保し、パルス入力、電源入力、アース等のピン番号を理解
- 直流安定化電源が必要
- パルス発信機が必要
- スピードセンサーのように回転数を計測する部品には、5Vパルスを発生させるものと12Vパルスを発生させるもののがある。
- スピードセンサーの取付位置はタイヤとミッションの2種類がある
配線図は、サービスマニュアルから取得。因みにハーレーダビッドソンはここからからダウンロードできます。巻き上げには時間が掛かります。直流安定化電源12Vは長時間運用に耐えられる機器が必要です。最後にパルス発信機です。PCの冷却ファンで代替する方法もありますが、この方法はお勧めしません。理由は、メーターが必要とするパルス電圧と周波数が不明な事です。この2つが規定値から大きく外れるとメーターが壊れます。パルス発信機はAmazonで安価で販売しているので、新たにファンを購入するよりパルス発信機を用意した方が無難です。用意した機器は以下になります
- 周波数発生器 DC 3.3V-30V 5-30mA 1Hz-150kHz(Amazonリンク)
- 降圧コンバータ DC 0.5-30V(Amazonリンク)
- 直流12V安定化電源(Amazonリンク)
- 配線コード
詳細説明:スピードメーターが必要としているパルス電圧と周波数は検証テストにて判断する必要があります。降圧コンバータを用意したのは、このパルス電圧を制御する為です。周波数発生器も同様で、スピードセンサーが発生する周波数がタイヤ1回転=1パルスとは限りません。プラマリー等の歯数をカウントしている事もあり、構造により大きく異なります、検証テストでは小さな値から始める必要があります。電圧は2V、周波数は10Hzから始めて段々大きくして針の振れ具合を確認します。
ピンのアサイン


ピンのアサインを確認するには、線の色を確認することが重要です。基本は赤は+端子、黒がー端子です。上記ではメイン電源のプラスにオレンジ白が使われ、メイン電源のマイナスには黒、スピードセンサーへの電源プラスにに赤、マイナスに黒が使われています。パルスは配線図では白、実際のコネクターでは緑、となっています。
メイン電源の12Vはイグニッションから来ていることが多いので、配線図とにらめっこすれば分かります。次はアースです。フレームに落としてあるのでコネクター側にテスターを当てれば判明します。最後にハルス信号です。通常スピードセンサーへは3本の線が出ています。2本はスピードセンサーを稼働させるための電源出力です。残りの一本がパルス入力となります。
このバイクのメーターの配線は以下の様になっていました。
- 1番ピン:電源 12V(オレンジ白の線)
- 7番ピン:スピードセンサーアース(細い黒の線)
- 8番ピン:スピードセンサー電源12V(細い赤の線)
- 9番ピン:パルス信号(細い緑の線)
- 10番ピン:電源アース(太い黒の線)
- 2番と11番はオドメーターとトリップメーターの切替でショートさせると表示が変わります
利用するのは、1番、9番、10番ピンです。7番と8番は利用しません。8番ピンはスピードセンサーを稼働させるための12VのOUTです。ここに電圧をかけるとメーターが破損します。
詳細説明:バッテリーからイグニッションキー(鍵部分)を経由して12Vがメーターに供給されます(1番ピンと10番ピン)。この電源はメーター内部で分岐され一部がスピードセンサー(7番ピンと8番ピン)に送られます。スピードセンサーは、計測したパルス信号をスピードメーター(9番ピン)に返しています。つまり、メーターから見て1番ピン、9番ピン、10番ピンは入力で、7番ピンと8番ピンは出力です。
起動手順

右上:スピードメーター、右下:周波数発信機

- 直流安定化電源になにも繋がない状態で電源をいれ出力電圧が12Vである事を確認する
- 直流安定化電源の電源を一旦切る
- 直流安定化電源からスピードメーターの1番と10番に接続し電源を入れる → メーターの点灯を確認
- 直流安定化電源の電源を一旦切る
- 直流安定化電源から降圧コンバーターに接続し電源を入れる → 降圧コンバーターの出力を3Vぐらいに調整する
- 直流安定化電源の電源を一旦切る
- 降圧コンバーターの出力を周波数発信機に接続し電源を入れる → 周波数を10Hz、デューティ比(パルスのONーOFF比)は50%に設定
- 直流安定化電源の電源を一旦切る
- 周波数発信機のパルス出力をスピードメーターの9番ピンに接続し電源を入れる → スピードメーターの針が振れればOK
- 周波数を100Hz程度まで上げても針が振れない場合、パルス電圧が低い事が考えられる。一旦周波数を下げ、降圧コンバーターの電圧を12V までゆっくり上げる。12Vまで上げても針が振れない場合、他の仕様や接続ミスが考えられる
- 針が振れた場合、パルス電圧を固定しパルス周波数を上げ、メーターを最大速度に合わせる。

スピードメーターの調整
テスト検証の結果
・パルス電圧:3Vから12V まで針が振れた
・周波数:5㎐ぐらいから3K㎐まで針が振れた。
テスト結果を踏まえ設定したパルス値は、電圧は5V,周波数は3k㎐です。その時スピードメーターは時速220㎞を指しています。
オドメーターの進め方
スピードメーターの針が振れればオドメーターもそれに比例して増えて行きます。上記映像では時速220㎞で走っている事になりこの状態でオドメーターを3万キロ進めるためには、下記の様になります
30,000㎞ ÷ 時速220㎞ = 136.3636364時間 → 5日+16時間22分
この様に長時間の作業となるため、直流安定化電源は放熱効果の良い製品を選ぶことが必要です


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